NHKドキュ『長すぎた入院 精神医療・知られざる実態』

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福島の原発事故で精神科病院から避難、避難先で「入院の必要なし」と診断されて"たまたま"退院できた66歳の男性。なぜ自分が39年間も入院しなければいけなかったのかを探る。

このドキュメンタリーは冒頭からとても胸にくるものがあった。それは語られることの悲惨さを思えば当たり前なのだけど、それだけじゃないな、何が作用してるんだろう?と考えてみて、この男性、時男さんの「外見」だと思った。

冒頭、時男さんがパブでお姉さんと話すシーン、それだけで「この人には他の人生があったんじゃないか」というIFが、ストレートに頭に浮かんでくる。それはあまりに"精神病患者"然としていない、時男さんの外見によるものだろう。

じゃあ、いかにも"精神病患者"然とした人が出てきたら?

「そうは言ってもこの人は社会で受け入れられるの、無理なんじゃないの」

そう、心のどこかで思ってやしまわないか。

精神疾患のある人の社会復帰。昔より語られるようになったとはいえ、実際にどのように社会復帰しているか、地域の中でどう生活しているかは、一般的にはほとんど知られていない。

また、実際にどんな人たちなのか、知り合う機会がないとどうしても机上の、もしかしたら偏った認識をもってしまうかもしれない。

 

…とまあ社会にこそ疾患があるのでは、的なことを書こうとしてて今気づいたんだけど、そもそも「社会復帰」という言葉が使われる時、「復帰」する前のその人はどこにいるのか。そこは「社会」ではないのか。

 こうして、確かな社会の一部を無意識に切り捨てて、自分は生きているんだな、と思った。