半年近くにわたり開催された森美術館15周年記念展「建築の日本展:その遺伝子のもたらすもの」も終わって1ヶ月以上経ち、そろそろほとぼりも冷めてきたところなのでここに感想を書いておこうと思います。
(単に途中まで書いてほっぽってただけなのですが)
で、まずこの展覧会、日本の美術館の特別展としては珍しいほど外国人観光客の人が多くて東京国立博物館の常設展みたいな感じ。
それはおそらくタイトルからして、日本の建築について総括して学べる内容という期待からだろうけど、実際に見てみるといわゆる日本建築史とは少し違っていたかな、と思う。
もちろん法隆寺や東大寺南大門、伊勢神宮のような伝統建築も取り上げられているけど、建築史的には必須となる東アジアからの影響や比較の視点よりも、伝統建築から近現代建築まで連なる「日本らしさ」にウェイトを置いた展示内容。
監修の藤森氏が語っているように、この展覧会のテーマは「日本の現代建築は世界の先端に躍り出て今にいたるが、それが可能になったのは、日本の伝統的建築の遺伝子が、建築家本人の自覚の有無とは別に、大きく関係している」ということを明らかにするというもの。
タイトルが「日本の建築展」ではなく「建築の日本展」なのは、近代以降の日本建築が模索し続けた「日本的なるもの」の大回顧展ということなんだろうか。
まあとにかく盛りだくさんな内容で面白くて、国宝の待庵の原寸再現は初in茶室なので興奮。茶室って日本建築というと必ず出てくるけど、茶道なんてやったことないしなんか敷居高いよね…という感じだったので。
他には、丹下健三の自邸の大きな模型と、桂離宮に対する「重たすぎる屋根との明らかな不調和によって全体としては死んでいる」という評とか。
確かに軽やかな屋根。
また、明治時代のシカゴ万博の俯瞰図が展示されていて、平等院鳳凰堂っぽい日本館は確かに良い位置(真ん中の庭園部分っぽい池の中島)にあるんだけど、オリエンタリズム枠なことがよくわかる配置なのが面白かったり。
協力にものつくり大学の名前があって、受験生に有名なあのものつくり大学が…!という妙な感慨を覚えた。
さて、一つ気になったこと。
伊勢神宮や鈴木大拙館などの小さな模型を置いてある「超越する美学」というセクション。
入り口に大きな文字で英訳と共にこう書かれている。
日本の建築にある意匠や構成の簡素さには、「シンプル」という言葉を超えた存在感があります。日本人建築家の作品が海外で高く評価されているのは、私たちも普段気づかない日本建築が持つそのような性格によるものではないでしょうか。
人工的なのに、人為的では「ない」何か。即物的なのに、物体では「ない」何か。目の前に美しい建築があるということが、論理の限界を超えるのです。木造にも打放しコンクリートにも通底する、超越する美学の系譜は、これからも永遠に更新されることでしょう。
また、内部には有名な「なにごとの おはしますかは 知らねども かたじけなさに 涙こぼるる」やブルーノタウトの「それは、神々の賜物の如く」など、伊勢に対する賞賛の言葉がこれまた英訳とともに大きく書かれている。
本物を見れるならまだしも、小さな模型と共に「目の前に美しい建築があるということが、論理の限界を超える」という、言ってみれば宗教的賛美のようなものを見せられて納得できるかというと、ちょっと厳しいのではないかと思った。
もし外国の美術館で、例えばフランスや韓国で同じようなキャプションがあったら…と考えるとどうだろうか。
そして、日本の現代建築が世界的に評価されるのは日本の建築家に知らずと流れている伝統建築の遺伝子が理由だ、という展覧会のテーマについて。
そこには建築家の実感のようなものがあるのかもしれないし、それは素人の自分にはわからないけれど、もしそういう「遺伝子」があるとしたら、世界的建築家の作品だけでなくそこらのディスカウントストアの建物にもその「遺伝子」があるんだろうか。
一流建築家にしかないとしたら、それは"個人"が日本建築というものに真摯に向き合い学んできた結果ではないかと思う。
美術館を出ると、ちょうど日没の時間帯だった。展望ルーム、東京タワー方面は混んでるけど新宿方面は混んでないので写真取り放題。
ビルを出て麻布十番の方へ歩く。
サンモリッツ名花堂という見るからにいい感じのパン屋さんにシベリアがあったので買いました。
夕食はカシュクというカレー屋に入った。1人・お酒を飲めない・知らない街となると夜の選択肢はカレーかラーメンぐらいになっちゃう。たまたま自分以外にお客さんはおらず、静かでよかった。
写真だと小さく見えるけど、かなりボリュームある。コク的な美味しさと爽やかな美味しさのバランスが良くて、シーフードも新鮮で次の日にはもう一度食べたくなる味。機会があったらまた行きたいです。
ちょっとした口直しもつく。カレーを食べた後って口の中に脂が残る感じがするけど、ここのは店を出る時にはもうさっぱりしてた。
家に帰ってシベリアを食べてみると、羊羹のモタァ…という圧がすごい。カステラはそれに比して空気のようにふわふわ。食感はふわモタァ…ふわモタタァ…って感じ。シベリアリテラシーゼロの自分だけど、これが本物か…と謎に納得。