駄菓子屋としての無印良品の魅力に迫る

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無印良品の駄菓子とオリジナルを食べ比べました

無印良品で前から気になっているものがある。レジ前に無造作に積み重ねられたチキンラーメンだ。

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このインダストリアルさがかっこいい!

身近なところで日本人の「丁寧な暮らし」を支えるのが無印良品である。実際はリーズナブルな大量生産品であっても、ニトリやユニクロに比べどこか手作り感を匂わせる商品が多い。

そんな中でこのチキンラーメンはジャンキーかつ大量生産品然としてるところにロマンを感じる。

そしてこれ、無印では「駄菓子」カテゴリーなのだ。

家具屋、服屋、文房具屋、カレー屋、アロマディフューザー屋などさまざまな顔を持つ無印良品だが、駄菓子屋としての顔も持っていたのか。

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ということで近くの無印良品へやってきました

まず無印で駄菓子を選び、スーパーでそのオリジナルの駄菓子を探す。そして食べ比べたい。

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スーパーに比べ無印でカゴ一杯のお菓子はちょっと恥ずかしい

レジでは無印らしい、鼻へふわっと抜けるような発声の男性店員さんが一つずつバーコードに通していく。不思議なほどゆっくりに感じる。

食品だけを買うと、スーパーで買い物してる気分になるからだ。高速レジ打ちおばさんはここにはいない。

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食料品だけなのに紙袋に入れてもらえると高級スーパー気分が味わえる

次にスーパーと駄菓子屋をハシゴする。

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久しぶりのカラフルさと物量に圧倒される

大人になって駄菓子を探すと目が疲れるという発見があった。

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駄菓子屋は木の棚が素敵だった

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こうして無印とオリジナルの駄菓子が揃った

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お菓子を載せる小皿

左は無印良品のもの。右はおばあちゃんちに必ず一つはありそうな柄をダイソーで選んだ。この小皿に載せて見た目も味も楽しんでいきたい。

※クリックでお好きな駄菓子に飛べます。

☆ 無印のゼリービーンズ vs 春日井製菓のゼリービーンズ

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まず最初はゼリービーンズ。子供の頃のあこがれのお菓子だ。『ゼリービーンズ』(82年、ふくやまけいこ作)という素敵な漫画があって、自分の中でゼリービーンズは80sのポップでキラキラした雰囲気をまとっている。

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買う時からそっくりだなとは思っていたが、こうして比べてみると驚くほど似ている。春日井製菓の方が色味は蛍光色っぽい。

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…あ!同じ!

無印良品の方も春日井製菓のOEM(他社ブランド用にメーカーが製造した商品)だったのだ。そっか、文房具もぺんてるが作ってたりするもんな…。

春日井製菓vs春日井製菓。不毛な争いは避けたいが、同じ会社ならむしろ色味の違いが気になる。

原材料名を見ると、無印はアカビートや紅花黄などすべて天然の着色料なのだ。それに対し春日井製菓は黄4や赤40などの合成着色料。無印的にはナンバリングされた着色料はNGなのか。同じだからこそ無印らしさが際立つ。

(あとでオリジナルな無印の駄菓子も出てくるのでご安心ください)

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並べてかわいいゼリービーンズ

食べてみると味も違う。春日井製菓の方はやや香料の人工的なサイダー感が強く、オモチャっぽいくだけた味がする。それに比べると無印は勝手知ったる優しい味。角のとれた思い出といった感じだ。

そしてどちらもポイフルとは異なる水飴のねっとり感。93年発売のポイフル世代である自分は子供の頃戸惑った憶えがある。

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「はがき・電話何でも構いません」の足りなさがレトロでよい

 

☆ 無印のこんぺいとう vs 春日井製菓のこんぺいとう

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次はこんぺいとうだ。こちらも春日井製菓のOEMで、今度は原材料まで全く一緒。

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まったく一緒!

ポルトガル語の「confeito(コンフェイト)」が訛ってコンペイトーになったという。「ぺい」がかわいいこんぺいとう。

原材料は砂糖と着色料のみ。ポリポリ食べると心が和らぐ甘さ。

ちなみに無印版ゼリービーンズと一緒の天然着色料が使われている。

駄菓子のキャラクターによって春日井製菓は着色料を使い分けてるのだ。

無印の駄菓子は明治やグリコなどの大手ではなく、これ!というヒット商品を持つ中小メーカーが作っているようだ。春日井製菓は1928年創業の老舗。駄菓子界のレジェンド。

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食べ残りはチャックのある方にまとめられる

値段はどちらも100円前後なので、明らかにオリジナルの方がコスパは高い。だがここで、ささやかなボッタクリだと早合点しないで欲しい。

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「ぽち菓子など小さめのお菓子が入れられる巾着です。ギフトにも使えます。」公式HPより

これらの小分けの駄菓子は「ぽち菓子」というカテゴリーに入っており、一人で食べきれる量に設定されているのだ。大人が疲れた会社帰りに買って懐かしむ…といった使い方を想定してるのだろう。なら下手なアレンジより本物である方がよいのではないか。

そして小憎いのが、このギフト用の巾着袋である。

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この袋に入れれば、駄菓子がちょっとしたプレゼントになるのだろう。これで文化系女子にモテたりするんだろうか。

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長寿の象徴である長い藻がしっぽみたいなミノガメ

☆ 無印のミックスラムネ vs 三矢製菓のレモネード

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無印らしさといえば、笑ってしまったのがこのミックスラムネだ。創業85年、ラムネ菓子一筋の三矢製菓のOEMである。

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カラフルな外袋を開けるとふわっと香る甘い匂い。子供の頃の夢。

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見よ、この徹底的に大人にしか通用しないパッケージを。

これが無印だと言わんばかりのミニマリズムである。

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味も判別不能。

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開けてしまえば同じ匂い。舌に乗せると時間差でラムネの甘みが爆発する。

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組み合わせはやや異なる。

 

☆ 無印のポテトチップス vs カルビープロ野球チップス

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ポテチといえばジャンク菓子の王様だが、駄菓子といえるかは微妙なところだろう。

駄菓子って、自分のお小遣いで買い自分だけで食べ切る、数少ない子供の所有物だ。だからこそ美味しく感じる一面があると思う。

その点、ふつうのポテチは量が多く兄とシェアしなければいけなかった。

だが、プロ野球チップスは1人で食べ切ることが許されるギリギリのサイズだった。だから駄菓子枠なのだ。

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カードの選手は2人とも年下だった

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ヨーロッパで製造、輸入者は株式会社宮田

一方、無印のポテチは駄菓子ではなく輸入菓子という別ジャンルだ。「フランス産」に無印なりのドレスコードを感じる。無印は普通のポテチが住めない清流なのだろう。値段も390円とお高め。

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どちらも塩と油が美味しい。国は違えど後味は一緒だ。値段が高い分、無印の方が厚みがあってザクザクした食感やジャガイモの旨味が感じられる。

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無印の方が塩分濃度が高い

健康志向なイメージのわりに、意外としょっぱかった(おいしかった) 

☆ 無印のつぶグミ vs 明治製菓のポイフル

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やっと比較できそうな組み合わせ。つぶグミも春日井製菓のOEM。つまり春日井製菓と明治製菓の代理戦争である。

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大きい分、歯応えはつぶグミが上だが、どちらも絶妙な噛み応えだ。

ポイフルの方が酸味が強くてそれぞれの味が立っている。今!って感じの味だ。

つぶグミは甘みがまったりとして懐かしい味。フィルムの中の家族写真のような。どちらも美味しいので好みの範疇だと思う。

 

☆ 無印のカラフルチョコ vs 明治製菓のマーブルチョコ

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vs明治製菓が続く。無印の方は加工所が株式会社いちもんめ。

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夢が詰まったミニアソート

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2020年夏、そんなキラキラした目で見つめないで欲しい

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右がマーブルチョコ。大きさや照り具合はほんの少し違うが、めちゃくちゃ寄せてきているのがわかる。とはいえマーブルチョコも欧米のSmartiesやM&Mを参考に作ったらしいので、孫みたいなものだと思う。

味もそっくりだった。

 

☆ 無印のフルーツスティックキャンディ vs チュッパチャプス

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駄菓子の殿堂、スペイン生まれのチュッパチャップス。長年チームに貢献し生え抜き然としてる助っ人外国人みたいだ。

一方の無印はここでしか買えないオリジナルの駄菓子だが、新しいのにすっと心に馴染む見た目。

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ぶどう味。製造元は中目黒にある飴専門の宮川製菓

あ、おいしい!カラフルさが見掛け倒しではない、濃縮果汁の鮮やかな味がする。実直な美味しさ。

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サクラ味

スペイン原産でサクラというのが気になって買ってみたが、絶妙にローカライズされていない味がする。

小学生の頃、チュッパチャップスを咥えている=少年漫画的余裕の見せ方=カッコいい、という時代が一瞬あったように思う。ほんの一瞬だけ。

 

☆ ご当地菓子という可能性、山形のミルクケーキ

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ミルクケーキをご存知だろうか。「おしどりミルクケーキ」の名で知られる山形県名産のご当地お菓子である。

これが無印で気軽に買えたとは!以前の東北旅行でハマってたので、今回一番テンションが上がった発見だ。

無印の方も同じ日本製乳が作っており、ご当地菓子はOEMのひとつの正解だと思う。

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練乳をカリッと固めた優しい味。なぜ全国区にならないのかが不思議なほど、正攻法の美味しさだ。

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子供の頃は苦味&甘味の至福を知らなかった

 

☆ 食わず嫌いから最高のコーヒー請けに。無印の麩菓子

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製造元は麩菓子の老舗・ミサワ食品

無印では煎餅や麩菓子などのおばあちゃんちの定番菓子も揃っている。

実は初めて食べる麩菓子。

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食べ切る自信がなくて無印だけで買ったのだが、これが驚くほど熱いコーヒーに合う。

サクッと口に入れてからコーヒーを飲むと、黒糖のざらっとした甘味とともに麩がふわっと軽やかに溶けていく。しかも見た目に反して19kcalしかない。

素晴らしい。コーヒーうけとして今もリピートしてる。

 

☆ 今は亡きグミチョコの面影…無印のグミチョコレート

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OEM元の記載はなし

子供の頃好きだったのに忘れてしまったものって誰にでもあると思う。

明治のグミチョコがまさにそれだった。無印で見て思い出した。グミチョコ、好きだった。確かこのパッケージだ。

懐かしさに震えながらスーパーを探したが、どうしても見つからない。

調べてみると去年生産終了になったようだ。

さらに調べるとトップバリューで細々と類似品が売られているという情報を見かけた。そうか、そういう時代なのか。

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ホワイトチョコにふどうグミという組み合わせは無印オリジナル。ぶどうの控えめな色味が無印らしい

中のグミはゼリーに近い柔らかさで、チョコと一緒に溶けていく。

もう少しグミの歯応えがあった気もするが、おぼろげなオリジナルの記憶もこれを食べたことで霧散していった。

でも思い出とは別に美味しい。甘さ控えめでいくらでも食べれそうな味。これも後でリピート。

 

☆ 無印のわた菓子 vs OKストアで売っているわた菓子

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市販の綿菓子って珍しい!と思って買ったのだが、食品業界は熾烈だ。スーパーにも普通にあったし半額くらいだった。

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どちらも愛知県で作れられている

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座布団の中身みたいな無印のわた菓子

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さすがに出来立ての綿菓子のようなフワフワ感はないが、無印のは中ザラメ糖を使っていて琥珀色に溶けていくところがいい。OKストアの方は真っ白なので雪みたい。

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余談だが、ちゃんと封をしてなかったOKのわた菓子は翌朝梅雨の湿気でカチカチの砂糖に戻っていた。

 

☆ 無印良品のミニラーメン vs ブタメン

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冒頭で紹介したミニラーメン。実はこれ、ダイソーなどに売っている「東京拉麺」の製造元である新栄食品が作っている。

じゃあパッケージ以外は全く一緒かというと、そうでもないところが面白い。ちょっとややこしいのだが、4個入りのミニラーメンは塩分量が1.7gで東京拉麺の同商品の2.0gよりも控えめになっている。一方、写真の16個入り大袋は2.1gで東京拉麺の同商品の2.0gよりもほんの少し高い。

大袋ユーザーはしょっぱいのが好きみたいなマーケティングをしてるんだろうか。

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対するはブタメンとんこつ味

ポイフルと同じ1993年に発売された平成生まれの駄菓子。

浅田真央さんが好きだというのがニュースになっていた気がする。製造は株式会社おやつカンパニー。キャッチー過ぎる会社名だが、wikipediaに「1995年 日本初のインスタントラーメン味付中華麺を発売。日清チキンラーメンに先んずること3年」という記述があるほどの老舗だ。

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無印ではベビースターのようにして食べることも推奨されている。スープになる分、旨味が強めで美味しい

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お湯を注ぐ瞬間のワクワク

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3分たたずにいい感じになる

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正しくチキンラーメンの味がする。程よいしょっぱさ。お酒を飲んだ後の〆に食べる人が多いようだが、汗をかいた夏の朝に食べても美味しそうだ。

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スープの色は綺麗なオレンジで飲み干したくなるが、後が控えている

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対するブタメンは、こってりスープというのが嘘のようにあっさりしている。今食べるとこれくらいが丁度良い。

昔食べた時はもっとこってりしていた気がするが、93年の発売以降、巷の拉麺がこってりサイドに進化し続けてるのかもしれない。

 

☆ 軽くミラクルを起こしている、ミニラーメントムヤムクン味

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キムチ味、トムヤムクン味

味のバリエーションはこの三種類。キムチはまだわかるが、トムヤムクンというチョイスが無印らしい。そしてキムチ味は辛いチキンラーメンといった感じだったが(実際に本場韓国の無印ではキムチ味を名乗らず"辛い味"と名乗っているらしい)、トムヤムクンは一味違った。

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麺そのものに味がついているチキンラーメンは、良くも悪くも旨味成分のくどさが舌に残るものが多い。その点このトムヤムクン味は、程よい酸味と辛味がそれをうまく中和して、たいへん爽やかな味になっている。

 

☆ 無印のメロンソーダ vs がぶ飲みメロンクリームソーダ

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駄菓子の〆はメロンソーダである。

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「合成着色料、不使用です。」

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安定のナンバリング着色料

やはり無印は気にしてたのだろう。中が見えない分、色が気になる。

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瓶はそれ自体が体験だ

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しゅわしゅわと夏の音がする

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そうきたか。鈍い青銅器みたいな色合いである。

ネット上で「哀愁漂う…話題の無印良品メロンソーダがエモい♡」というブログ記事を見つけたが、「哀愁漂う」は言い得て妙だ。

控えめなメロン風味にもやはり哀愁が漂っていて、がぶ飲みのキャッチーさとは好対照。寂寥感がある。

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つぶグミとポイフルを入れると、ゆらゆらとサイダーが弾けていた


今回はコロナ禍なので一人で食べたが、懐かしさを求めるなら同年代の友人と一緒にワイワイ食べ比べるのがいいかもしれない。

ただ、大人になってふと懐かしくなり一人食べてみる、そんな駄菓子の在り方もいいんじゃないだろうか。