梅雨の空気は地面に近い。秋晴れのように空までつながっている気がしない。
そんな日は低湿地帯へ行くに限る。
深大寺の隣にひっそりと存在している水生植物園。日曜日であっても人がまばらな程度に花が咲いている、神代植物公園の飛び地だ。
雨上がりに散歩がてら行ってみた。
最近花を見ると雄しべに注目してる。これは露出狂。
このバナナにそっくりの花はトゲが多い・駆除が難しい・毒があるという性質から悪茄子(ワルナスビ)と呼ばれている。不良グループの3枚目キャラっぽい。
水が滴っていても、花びらは少しずつ乾燥してきている。もうすぐヴィンテージ紫陽花の季節だ。
南側から深大寺へ行くには、一度坂を上って、また下る必要がある。
バス停の深大寺入り口は大通りから東へ入っていく道だけど、もし調布駅から歩くなら南から深大寺温泉の脇の道を上って行った方が楽しいと思う。丘の上にはカルメル会修道院というカトリック系の修道院がある。たまにシスターの格好をした女性(つまりシスター)を見かける。そして丘を下ると深沙大将を祀る深沙堂がある。東の丘の上には水神(蛇)を祀る青渭神社。キリスト教に比べると土着的な性質が際立つ。神社とは地形そのものなのかもしれない。
丘の上を右に曲がってもいい。緑が深く思いがけない道がある。
この日のカメラは富士フイルムX10。富士フイルムは緑が青く出やすい。たまに嘘っぽい時もあるけど、梅雨の色を綺麗に見せてくれる。
脇道から深大寺の方へ下っていく。
至る所に湧き水が流れている。雨の多い日には、澄んだまま溢れていたりする。
そんな土地だから水生植物園もあるのだ。
中に入ると、谷底ながら視界が開けて気持ち良い。
あと二週間早く来れば花菖蒲が一面に咲いていたらしい。
この日一番咲いていたのは、半夏生(半化粧)。夏至から11日目に咲くという由来と、葉が半分白粉を塗ったようになるからという由来がある。どちらももっともらしく、ダブルミーニングで素敵だと思う。
花弁がないため、沢山の雄しべが剥き出しだ。
ウネウネしてる。
虫媒花なので白い葉っぱは花弁代わりだとか。葉脈をずっと見てると気持ち悪い気持ち良さがある。
小さなバッタは調べてみるとヒシバッタかな?バッタの中で一番小学生に相手にされない種類だ。肌の質感が爬虫類みたい。
餌をくれると思って近づいてくる亀の泳ぎのスローモーション感は、野生動物の中でもトップクラスに癒し効果があると思う。その遅さに人への信頼を感じる。しかし植物園の中なので何もあげられない。ゆっくり近づいてくる分申し訳なさが加速する。
水生植物園の敷地の半分は小山になっていて、深大寺城という中世のお城の跡がある。もともと土塁のみのストイックな城。登りたかったけど、急速にお腹が痛くなったので帰った。
国宝指定から3年で、無料→300円→専用仏殿まで建つようだ。
梅雨の気まぐれな晴れ間は不思議な水色をしている。青空の方も「え、今出てっていいの?」と現実感がないのかもしれない。